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Posted by たまりば運営事務局 at

オッド・アイ披露してほしかったな

瞳

その日の夕方、瑞穂はいつものカラコン通販屋さんに寄った。
いつも付けているエバーカラーワンデーのカラコンの補てんと、今朝、正也が言っていた目の色の違いについて、店員のお姉さんに聞こうと思ってだ。
店員さんは、瑞穂の話を聞いて、正也と同じくオッド・アイだと言う。
そして、日頃はなかなかできないだろうけど、彼氏を驚かしてあげなさい、と、サンプルでブルーとグリーンのカラコンを瑞穂にくれた。

その週末、瑞穂と正也の共通の友達3人が、二人の新居に集まって、お鍋をしようということになっていた。
この晩とばかりに、瑞穂は冬美と同じく、右目にブルー、左目にグリーンのカラコンをつけた。正也と、集まった男女は、冬弓をだっこして洗面所から出てきた瑞穂にびっくりする。
「瑞穂、最近、オシャレになったと思ったら、すごい!」
女友達が大絶賛する。男友達は何が起こっているのかわからず、正也をつつく。
「なんで、瑞穂、目の色が違うんだ?」
「最近、カラコンしてたけど、オレも、冬と同じ目をした瑞穂を見るの初めてだ」
あんまり正也が瑞穂をうっとり見ているので、友人たちは面白がり、二人と猫の写メを
取ろうと言い出した。
いっぱい取った写メの半分は、目の色が反射して、赤く写ったりしていたけど、ばっちり瑞穂と冬美のブルーとグリーンが写っているものもあった。
「後で、写真にして送ってやるよ」
男友達がそう約束してくれた。

5人と1匹は楽しいお鍋パーティを過ごし、夜遅く、友人たちは二人の新居を後にした。
二人になって、正也は、まじまじと瑞穂を見つめる。
「何?」
正也は照れて笑う。
「キレイだな、と思って。でも・・・」
「でも?」
「二人きりの時にオッド・アイ披露してほしかったな」
正也の我がままに、瑞穂はくすくす笑う。
「子供みたい」
正也は恥ずかしそうに頭をかきながら、瑞穂に冬美をだっこさせて、自分の携帯を手を伸ばして持ち、瑞穂の肩を引き寄せる。
「え?自撮り?」
自撮りの写メは思った以上にキレイに取れていた。
「やった~!」
それを見て喜んでいる正也をみて、瑞穂は冬美と目を合わせて微笑んだが、冬美は我知らず、と、するりと瑞穂の腕をくぐり抜け、別の部屋へ姿を消した。
「やっぱ、私、猫、好きだわ~」
瑞穂はつぶやいた。  


  • 2015年01月10日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 10:45Comments(0)短編

    急に二人で暮らそう、と言い出した

    猫の冬美

    瑞穂が子猫の冬美を拾って2年。都内マンションで一人暮らしいていた瑞穂は猫が飼えず、最初の半年は実家に猫を預けて、週末会いに行くというパターンを繰り返していた。

    半年を過ぎた頃、彼氏からクレームがきた。
    彼氏の正也は、会社員で、実家通いである。
    「毎週末さぁ、オレと猫、どっちが大事なわけ?」
    拗ねる正也に瑞穂はわざと意地悪く言う。
    「じゃあ、正也の家で冬ちゃん置いてくれればいいじゃん」
    「またまた~、うちのおふくろも妹も動物アレルギーだって知ってるくせに」
    実際、たまに正也が瑞穂について彼女の実家に行って、猫の毛をつけて家に戻ると、
    妹はひどいアレルギー症状を出すらしい。
    「重症ね」
    「瑞穂こそ、重症な猫病だ」

    そんなやりとりが続いて1年くらい経った頃。
    正也が急に、二人で猫と暮らそう、と言い出した。
    お互いの両親も結婚が前提なら構わないという。まだ結婚を意識したことがなかったのに、親たちの了解が早すぎて、瑞穂はとまどう。
    「正也は、本当にいいの?このままじゃ、私たち、結婚させられちゃうよ」
    おかしなテンションの瑞穂に、正也は思わず笑ってしまう。
    「瑞穂は、オレと結婚するのイヤなわけ?」
    「そんなんじゃないけど、猫問題が結婚問題に発展するとは思っていなかったから」
    「瑞穂にとって、冬は、神様からのプレゼントだったんだろ。だからこういう流れも
    必然なんじゃない?」
    「ちょっと、冬ちゃんを呼び捨てにしないで!」
    そんな噛み合わない会話をしながらも、二人は楽しくペットOKの新居を探し、
    翌年早々引っ越しした。

    結婚を前提とした二人暮らしが始まったころから、瑞穂はとてもオシャレになった。
    元々可愛らしいタイプだったが、ますます大人の魅力が増したのだ。
    男の正也には、よくわからなかったが、朝、瑞穂がコンタクトをしているのを見て
    気がついた。
    「あれ~、瑞穂、目の色きれいになった」
    瑞穂は恥ずかしそうに笑う。
    「そう、最近、会社でカラコンしている同僚がいて、教えてもらったの」
    「そんなオシャレして、彼氏募集中?」
    正也の冗談に、瑞穂はぷん、とふくれる。今年の6月に挙式が決まっているのに
    なんて意地悪を言うんだろう。
    瑞穂が無視していることにも、気に留めず、正也は「あ!」と叫ぶ。
    「何よ」
    不機嫌な瑞穂に、正也は、冬美を抱きあげ、瑞穂のほうに向ける。
    「今頃気付いたけど、冬・・・ちゃん、片目ずつ、目の色が違う!」
    それは瑞穂の母親も言っていた。珍しいニャンコだけど、時々いるらしい。
    右目がブルー、左目がグリーン。暗いところでないと、わかりにくいが、確かに色が
    違う。
    「珍しいけど、時々いるらしいよ」
    瑞穂は母親の受け売りでそう言う。
    正也は初めて自分の飼っている猫を惚れぼれと見つめる。
    「まるでデビッド・ボウイだ。オレ、昔ファンだったんだ。こういうの、オッド・アイって言うんだぜ」
    「ふーん、そうなんだ、ね、ね、冬ちゃん、可愛いでしょ?」
    初めて自分から冬美に興味を持ち始めた正也を、瑞穂はうれしく思う。  


  • 2015年01月06日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 12:00Comments(0)短編

    つぶらな瞳で、瑞穂を見つめる

    野良猫

    瑞穂は、やっぱりどうしようもなく愛おしくなり、身をかがめ、三毛猫に手を伸ばす。猫は、つぶらな瞳で、瑞穂を見つめると、手にすりすり身を寄せて、そしてなんと、かがんいる瑞穂のコートの中に飛び込んできた。

    「うわぁ」これには瑞穂も驚き、その場で尻もちをついてしまう。

    「あんた・・・私ところに来るつもり?」猫はニャーと答えた。

    マンションに戻る前にはもう、瑞穂は猫の名前を考えていた。クリスマス前に神様が自分に贈ってくれた、猫。名前は・・・ヨゴローザ。

    母親に電話して、「はぁ?」と言われた。

    「マンションで猫飼えるわけでしょ! どうせ、お正月には、家に連れて帰って来て、お母さんが面倒みる羽目になるのよ!」怒りながらもまんざらでもなさそうな母の声。

    「それにしても、なんで、クリスマスに神様からもらった云々の件(くだり)があって、名前がヨゴローザなわけ?男らしすぎるわよ。ミケだから、メスでしょ? 」

    「昔、テレビの人形劇で‘ひげよ、さらば’っていう猫の話があって、すごくかっこいい猫の名前がヨゴローザだったの」

    「でも、女の子にそれは、気の毒よ。」

    「じゃあローザとでも呼べば?」

    「日本猫に横文字は無粋だわねぇ。お母さんなら、もっと日本の冬に合った猫らしい名前つけるけどなぁ」

    「たとえば?」

    「うーん、冬美ちゃんとか」

    演歌好きの母のネーミングに、瑞穂は笑う。

    「私が飼うことになったら、ローザ、お母さんの猫になったら冬美にすればいいじゃん」母親は呆れて笑う。

    「ほら、やっぱり、お母さんを当てにしてる。とにかく年末には、その猫と帰っておいで。父さんも待ってるからね」

    母との電話を切って、コートを着たまま胸に抱いている猫にほほえみかける瑞穂。

    「クリスマス・プレゼントみたいな出会いかたしたけど、これから家族だよ、仲良くしようね・・・冬ちゃん」

    瑞穂は、コートの中にいる猫の体温をぬくぬくと感じた。  


  • 2014年12月06日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 11:27Comments(0)短編

    「さみしいな~」とつぶやきながら

    猫と赤ちゃん

    瑞穂は、ずっと猫がほしいと思っていた。実家では、子供の頃、犬も猫も飼っていた。両方好きだったけど、瑞穂は猫のほうが好きだった。散歩もトイレも自分でできる猫は、自立した大人のようだ。エサ以外はおねだりしない。ほっておいても、何かを見つけ一人遊びをしている。瑞穂の実家で飼っていた猫は、女の子で、とても気が強く、父親はメロメロで、猫と瑞穂のケンカになると、理由もきかず、瑞穂が叱られたものだ。

    今、瑞穂は都会の真ん中の賃貸マンションで一人暮らしをしている。もちろん賃貸契約書には、犬猫禁止とあったが、上の階からは、小型犬の吠え声がしてたりして、「んむ?」と思うことがある。黙って飼えば、何も言われないのかもしれない。

    でも小型犬はケージに入れることができたけど、猫はそんなわけにはいかない。彼ら(彼女ら)の特権は、自由であることなのだ。こんな狭いマンションで飼うこと自体、申し訳なかった。

    クリスマスも押し迫った、ある寒い日の晩。瑞穂は、ダウンを深々と身にまとい、仕事から家に帰る途中だった。野良猫が多い街の中で、一日何十匹と目にする猫たち。でも瑞穂が声をかけても知らんぷりで、全然人に懐こうとしない。

    そんな猫に「さみしいな~」とつぶやきながらも、どこかホッとしている自分がいる。本当に、寄って来られて、マンションまでついて来られたら、困るという事情があるからだ。

    「なら、最初から、声をかけちゃいけないよね」

    猫相手にそんなことをつぶやきながら、帰り道の角を右に曲がったところで、瑞穂は、バチッと、ある猫と目が合った。まだ、子猫で、瑞穂の好きな三毛猫だ。三毛猫は、遺伝子学上、100%女の子だ。先日、突然変異で生まれた三毛のオス猫に、何千万かの値段がついていたのをテレビでみたことがある。

    瑞穂はあえて、その猫には声をかけなかった。なにか運命的なものを互いに感じていたのかもしれない。三毛猫は、そんな瑞穂の足元に寄って来た。子猫とはいえ、都会の猫には珍しいことだ。  


  • 2014年11月15日 Posted by 弘せりえ 2014dec at 11:01Comments(0)短編